最終更新日:2005/09/25
■スリッパ「モンゴルへ行く」 ひとり旅の巻
 

HATANBULAG〜NARAN(8月10日)

走行2日目(ラリーは3日目)は約570km程の長い行程です。このスリッパでこんな長い距離を走るのは初めてなので、楽しみのような不安のような…。
昨日の2度のパンクですっかり"パンクが怖い症候群"になった私は、遅かろうが笑われようが、ゆっくり戦法に徹しました。吠えながら追いかけてきたはずのモンゴル犬が追い越していっても、気にしない気にしない。RCPに誰も(選手)いなくたって気にしない気にしない(スタッフの方にはご迷惑をおかけいたしました)。おかげでパンクは一度もしませんでしたが、すぐに暗くなってしまいました。時計の針は夜の9時過ぎ。その後CP2が見つけられず、暗闇の中で#72カブの坂本選手や#121ミニクーパー(田中/似内組)らを含む5台の選手と行動を共にします。

CP2を見つけられたのは、すでに0時を回った頃で、そこからキャンプ地まではあと140km。通常なら2〜3時間で着ける距離ですが、スリッパではそうはいきません。それからZ1のカミオンバレー(ドライバー:菅原照仁氏)も加わって(←保護)、なかなか消化できない長距離の長さを噛み締めながら、私達一行はひたすらキャンプ地を目指しました。おとといから寝ていないせいで急に眠気が襲ってきました。ハッと気がつくと、すぐ前方に白くて大きくて肋骨のようなものがあるではないですか。マズイと思った時には、時すでに遅し。私のスリッパは無情にも、バリバリバリとそこを通過しまいました。ラクダさん、本当にゴメンナサイ。
こうして5台+1台は一晩中ずっと走り続け、キャンプ地に着けたのは、みんなが朝食を終えた朝8時頃でした。

遅かった理由:パンクの心配、ミスコース2箇所、エンジントラブル、寝不足
【走行時間:24h13m45s】

NARAN〜HONGOR(8月11日)


「スリッパ」+「ひとり」での予想する自己完走率は30%程度。この2日間寝ていなくても、なんとかキャンプ地に着けている嬉しさで、私はまだまだ元気でした。
小さなスリッパの小さな窓から見る景色は、壮大な自然はよりたくましく、ピスト脇に咲く草花はより優しく、私に見せてくれるのでした。

拓けた平らな大地をしばらくカップ走行で進みましたが、長く単調だったため油断をしたのでしょう。数十キロ走った先にあるはずの目標物"奇跡の並木"がどこにも見当たりません。正面には大きな山脈のような山々が立ちはだかり、次のGPSポイントは山の方角を指しています。しまった!と思いました。今までの経験から、そういう時は山の手前ではなく、山の向こう側か、もしくはその途中にあることが多く、オンコースを見つけられなければ、大きな山を外回りで迂回するしかなくなり、私のスリッパでは何時間かかるか知れたものではありません。燃料だって心配です。入り口を見つけられるかどうかがポイントでした。
すでに距離が合っていないこの期に及んでは、コマ図にある"山の中の1本のピストを見つけなさい"だけが唯一のヒントで、それを探しにスリッパは山の奥へ奥へと入って行きました。

モンゴルの山は木がありません(場所によって異なります)。障害物は足元程度の草木か尖った岩なので、それさえ注意すれば、車で山を越えすることは可能です。但しいきなり斜面が崩れていたり、雨水の通り道で掘れている箇所もあるので、充分な注意が必要です。しかもオンコースを外れているので、何かあっても誰も助けに来てはくれません。
山の正しい入り口を見つけられない私は、仕方なく道のない山の斜面を登りだしました。知らない世界に足を踏み込むワクワク感と同時に、普段"道を通る"という概念で暮らしているせいか、山に侵入している悪者になったようで、誰かに怒られるのではないかと心配にもなりました。どれだけ進んだのか、でももう後戻りはできないと思った頃、急な斜面のピストを見つけ、迷わず駆け上がった私は、アッと息を飲みました。なんということでしょう!そこにモンゴルの楽園を見てしまいました。険しい岩山に囲まれたそこ一帯だけに、まるで蛍光色のような澄み切った原生的な芝生が悠々と生え渡っているではありませんか。その色のなんと美しいこと。俗人など簡単に足を踏み入れてはならない神聖な場所に思えて、私はあわててそこを後にするのでした。
そんな天国があったかと思えば、その先はロード・オブザリングのような険しい岩山が続き、まさにそこは地球そのものでした。
かなり貴重な寄り道をしながら、何とかオンコースにも復帰でき、その日のキャンプ地にも暗くなると同時に滑り込みのセーフ。ホンゴル国立公園の砂丘群には、相当興奮しました。

遅かった理由:ミスコース、アクセル全開トラブル(アクセルワイヤーの石噛みによるもの)
【走行時間:9h05m20s】
HONGOR〜ZOUMOD(8月12日)

昨晩はラリーが始まって初めてキャンプ地で夕食を取り、横になって、ようやくラリーに合流できたような気持ちになれました。今日はいよいよゾーモットです。
昨日の砂地は全く問題なく、気持ちよくスイスイ行けちゃいましたので、今日の砂丘も楽しみにしていました。ところがSSスタートまであと200mというところで、まさかの失速。まだリエゾン区間だというのに2WDのスリッパは、いとも簡単にスタックしてしまいました。それからはもちろん炎天下の罰ゲームです。(お手伝いしていただいた方、ありがとうございました)やはり砂にはまだまだ勝てません。

実は昨日から自分の異変に気がついていました。両足が痺れっ放しなのです。シートのホールドがキツかったためか、それとも長時間座りすぎたためか、ずっと痺れっ放しなのです。今までこんなことは無かったので、今更ながらスリッパの厳しさを、身にしみて感じるのでありました。それにしてもスリッパは快調そのものです。
この日もいつものように時間が来ると、周りの景色は闇に消えていきました。あるはずのピストが見つけられず、周辺一帯をグルグル回って探しましたが、自分のライトと月明かりだけでピストを見つけることは不可能だと分かると、覚悟を決めて夜のカップ走行に切り替えました。夜は先に何があるのか分からないため、非常に危険で不安です。途中出てきた2mほどの段差は、斜めに走りながらライトで周辺を照らし、できるだけ低そうなところを探して通りました。その後何本かのタイヤの轍と交わったので、この辺は迷いやすいポイントだったのかもしれませんが、いずれにしても暗闇の今となっては、GPSだけが頼りです。迷った場所から20km先の目標物・オボを見つけたときは思わずガッツポーズ。
遠くからキャンプ地の明かりが見えたのは、夜中の1時を回っていたと思います。燃料を入れ、最低限のメンテナンスをして、食事をいただき(遅くにすみません)、2時間後に始まる朝のブリーフィングまでテントも立てずに、スリッパの側で寝てしまいました。

遅かった理由:スタック、パンク、ミスコース、寝不足
【走行時間:11h50m42s】

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