最終更新日:2004/03/19

■筆者紹介
 
斎木雅弘
ラリーレイド・モンゴル参戦を契機に、人間としての総合力が問われるラリーの魅力に心酔。「地球は魂の遊び場」を座右の銘に、世界の遺跡を旅する一方で、さらなるラリー挑戦を目指して修行中。
2003年のファラオ・ラリーではチームスガワラの菅原照仁が駆る日野レンジャーのナビゲーターとして参加。人間性の大きさと緻密なナビゲーションで日野レンジャーを優勝に導いた。
■ファラオ・ラリーの魅力
 
エジプトの象徴「ピラミッド」に集結したラリーカー。
「ファラオ・ラリー」、毎年エジプトで開催されるこのラリーは、実に魅力あふれる大会だった!
FIA・FIM公認の国際ラリーであり、その伝統と格式の高さは、その他の国際ラリーにも引けを取らない。出場者も実に豪華である。ラリーの最高峰、「パリダカ」の常連が顔を揃えているのだ。
このラリーの最大の魅力は、なんと言ってもエジプトというロケーションであろう。ピラミッドや王家の谷、アブシンベル神殿といった数多くの世界遺産がそこには存在する。かつて、ファラオやその軍隊、あるいは駱駝にまたがった商人たちが、夢や野望、そして財宝を求めて命がけで越えていった砂漠を横断するのだ。想像するだけで胸が熱くなる。冒険者のDNAを持つ者には、武者震いするほど魅力のあるルートのはずだ。
総走行距離3,334キロ、総SS距離2,558キロにも及ぶルートの設定も、変化に富んでいておもしろい。さまざまに色や表情を変える幻想的な白砂漠や黒砂漠。硬く波打つバンピーなガレ場や高速で走行できるフラットダート、垂直に登ったり降りたりする大きな砂丘など、選手を飽きさせることはない。
ナビゲーションの難易度も適度である。迷宮への罠もある。しかし、それは脱出不可能なほどではない。競技時間の設定も、かなり余裕を持って設定してある。早い日には、朝スタートして、お昼にはもうゴールしていた日もあるくらいだ。休息時間も充分に取れた。

料理は一流ホテルと変わらないおいしさ。
スタッフの数も充実している。ヨーロッパ人、エジプト人を含めて90人以上が選手のために働いてくれているのだ。サービスも行き届いており、キンキンに冷えたビールやコーラ、シャワーも毎日浴びることができた。スタッフの陽気さと笑顔も最高にいい。
そして何より特筆すべきは、食事のおいしさだ。テーブルに所狭しと並べられた生ハムやサラダ、香ばしい鶏肉、パスタまであるのだ。砂漠のど真ん中で、こんなに美味しい食事が取れるのだ。これほどの贅沢があるだろうか。美味しい食事は、心も豊かにする。過酷なラリーの日々で、それは選手たちのコミュニケーションの潤滑油にもなる。国籍の違いを超えて、多くの選手たちと会話を楽しんだり、友人になることもできるのである。
これほど完成度の高いイベントが他にあるだろうか。最近、日本ではこのラリーへの参加者が減り、メディアでも報じられなくなったため、風化して忘れられつつある。しかし、その上質なオーガナイズと、魅惑的なルートやロケーションは、日本人の心を再び捉えるはずだ。
ファラオ・ラリーの人気が再炎することを願いつつ、選手として参加した僕らの体験と、このラリーの現在を報告する。

■復活のファラオ
 
相棒・日野レンジャーとともに...
「ファラオ・ラリー」、その響きに伝統と浪漫を感じるのは、僕だけではないだろう。しかし、輝かしい栄光の歴史に彩られたこのラリーの名を聞かなくなって久しい。ここ最近は、「ラリー・オブ・エジプト」と呼ばれていたからだ。ところが今年、伝統ある「ファラオ」の称号が復活した。
この記念すべき03年度大会に、僕は「チームスガワラ」のナビゲーターとして参戦することになった。日本が世界に誇るトップ・ラリーイスト菅原義正氏率いる「チームスガワラ」の名を背負えることは、僕にとっては光栄の極みである。
出場車両は、「チームスガワラ」の代名詞でもある日野レンジャー。カミオン(トラック)クラスでのエントリーだ。
ドライバーは、義正氏の次男、照仁選手。98年、パリダカに初参戦以来、豊富なラリー経験を持つが、競技カミオンのドライバーとしては今回が初めてである。
初めてなのは僕も同じ。「ラリーレイド・モンゴル」に2度参戦した経験があるものの、本格的な国際格式ラリーへの参戦は、今回が初めてなのである。しかも僕らには、メカニックはいない。競技も整備も、すべて2人でこなさなければいけない。何もかもが始めてのトライアルであった。

第一章 ファラオ・ラリーの魅力>>>| 第二章 カミオンの衝撃>>>|第三章 勝利の街「カイロ」への凱旋>>>

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