
「ラリーレイドモンゴル2000(以下RRM)は『世界に通用する日本人選手を…』ということで始まった、日本人が主催する数少ない本格的な海外ラリーレイドである。この大会はパリダカなみの厳しさで知られ、6回目を迎えた今年の行程は8日間で3,585km。草原、砂丘、山越えなど変化に富んだモンゴルの大地で、今年も各参加者による様々な挑戦が新たなドラマを生んだ。そんな参加者の安全を確保するために、ラリーの最後尾を走行するトラックがカミオンバレーである。
昨年、日野自動車様のご厚意によりRRMのカミオンバレーとしてご提供を受けた日野プロフィアFU(6輪駆動車)は、主に除雪車として活躍している大型トラック。その堂々たる姿はカミオンバレーとしてふさわしいものであるが、平らな道をゆっくりと走る為に開発された車両であるがゆえ、オフロードを走るにはかなり無理がある。なにせリアにはダンパーさえ付いていないのですから。
果たしてそんな車両をノーマルのまま持ち込んで、リタイヤ車&人の回収やミスコースをした車両の捜索という任務を遂行し、オンコース(実際に競技車が競争をするコース)を走行できるのか?これが昨年、カミオンバレーのドライバーとして初めてモンゴルへ旅立つ前の正直な気持ちでありました。案の定、昨年のRRMでは初日の舗装路から穴やうねりに足をとられて悪戦苦闘。もちろんモンゴルのダート道には、まったく歯が立たない。走っていたというよりもウサギの様に跳ねていた印象しか残っておらず、ラリーの日程から丸一日遅れてゴール地に到着した。毎日の20時間ちかい運転、そして多くのバイク回収による疲労と無事に走り終えた安堵感、そして少しの自信が残ったカミオンバレーデビュー戦であった。
「今年は違うぞ!」なぜかスタート前から一抹の不安さえなかった。その意味不明な自信は2回目の余裕だけではない。ミシュランタイヤ様のご厚意で、パリダカの定番タイヤであるミシュランXZL 1400R20がパートナーとなったからである。『直径で20cm』昨年との違いはこれだけである。しかし、この20cmが魔法のような驚くべき力を発揮してくれるのである。タイヤは大きくなるほどギャップの通過が容易になる。さらに大きくなったタイヤのエア圧を落とすことにより、エアサスペンション効果も発揮するのである。もちろん大きいタイヤを回すにはそれなりのエンジンパワーを必要とするが、20,000ccを越すFUにはまったく関係のない話である。幸い懸念された後軸同士の干渉もない。
さて、ここで今年のカミオンバレー隊のメンバーをざっとご紹介。隊長兼ドライバーが菅原照仁。ナビゲーターは『プロのナビゲーターになりたい』と訳の分からないことを言って昨年、弊社に入社した小石沢彰。今回が彼のデビュー戦であり、ここが若干引っかかるポイントではある。そして昨年に引き続き通訳のハグワーという平均年齢29歳の3人体制。ちなみに弊社の近藤聡子/菅原義正組はビックホーンで競技に参加している。
1年ぶりに再会したカミオンバレーはタイヤが大きくなったせいもあって迫力満点。はっきり言ってカッコイイ。そして肝心の走行性能も確実にアップしており、昨年の同じ時期に悪戦苦闘した穴だらけの舗装路を猛スピードで突き進む。肝心のオフロード性能もすばらしい。今まで徐行といえる位のスピードでしか通過出来なかったギャップを何事もなかったように通過していく。まさにエクセレント!初日から日の変わる前にビバーク(キャンプ地)に到着してしまい、昨年は2、3回しか食べることが出来なかったビバークの夕食を堪能する。そして早くも2日目の50km地点でミスコースをしていた弊社の近藤がドライブするビッグホーンに遭遇。カミオンバレーに出くわすということは最下位を現すが、同時に我々が走っているルートがオンコースだということを現す。我々を見つけ、あらぬ方向から喜び勇んでこちらへ向かってくる。そのナビゲーターを務めているのはパリダカ・レンジャーでお馴染みの私の父・菅原義正。我々を追い越し、猛スピードで走り去っていったビッグホーンは、再び行ってはいけない方向へ消えていった。もちろん捜索を開始したことは言うまでもない。
今年は何から何まで順調であった。結局、すべてのビバークに到着し、最後の一斉スタートでは競技車の二輪・四輪と共に最終ゴール地・ウランバートルを目指す。今年の完走率は88%。例年は50%に満たないこの数字が、参加選手のレベルとバイタリティが向上したことを裏付ける。RRMから21世紀のスターが生まれる日はそう遠くはない。
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